猿の名がつく植物③サルトリイバラ
こんにちは。二助企画です。
前回に引き続き、サルの名がつく植物についてのお話を続けていきます!
突然ですが、もうすぐ端午の節句ですね。全国的に柏餅を食す風習があるかと思いますが、実は西日本の柏餅は、柏ではなく【猿捕茨(サルトリイバラ】という植物の葉っぱを利用していることがあります。
【猿捕茨(サルトリイバラ】とは、日本全土、台湾、朝鮮、中国に分布するユリ科の蔓性半低木。その葉は、もともと人々の暮らしにとって身近な存在であり、食料を包むのに使われていました。
江戸時代になると、端午の節句の習わしが始まりましたが、江戸ではサルトリイバラの葉を多量に集めるのが困難だったことから、カシワの葉を代替品として使うようになったという説があります。従って、柏餅のことを「いばら餅」と呼ぶ地域もあるようです。
現在では交通網も発達し、塩漬けの柏の葉が流通しているため、西日本でも柏の葉で包まれた柏餅もあります。西日本に住んでいる皆さん、次に柏餅を食べる機会には、ぜひ葉っぱチェックをしてみてくださいね。
そして、気になる名前の由来。
トゲがあるため、サルが引っ掛かって捕まってしまう!ということから、【猿捕茨】の文字が当てられていう説や、トゲのためサルが上に登り切れないため、人に捕まってしまう!という説などがあります。
しかし現実には、トゲの数は多くなく鋭くもありません。
驚くのは、別名の多さ。一番親しまれている別名は、山帰来(さんきらい)。他にも「猿捕(サルトリ)、猿繁(サルカキ)というように、「猿」が付く名の他に、各地に様々な方言が残されていて、「日本植物方言集」によると、なんと255の異名があるとか!
文献上での「さるとりいばら」の初見は、室町時代に成立した華道書「仙傳抄」のようです。ここで湧き上がる疑問。なぜ、華道書???
その答は、【猿捕茨(サルトリイバラ】の「実」にあります。
【猿捕茨(サルトリイバラ)】は、雌雄異株で、雌株には丸い実がなり、秋に赤く熟します。その実がついた枝葉は、生け花の花材としてよく使われているのです。クリスマスのリースなどで見かける小さくて可愛らしい赤い実が、【猿捕茨(サルトリイバラ】であることも。
話は広がりますが、てんかんの治療法として、大脳半球切除手術に日本で初めて成功し、「日本脳外科の父」とも呼ばれる中田瑞穂(なかだみずほ)氏は、俳人としても有名で、
さるとりの まことやさしき 花もてる
という句を残しています。
ちなみに、【猿捕茨(サルトリイバラ)】の根は、漢方薬にも利用されているんですよ!
255という桁外れな異名を持ち、葉っぱ・実・根っこと、あらゆる部位が、人々の暮らしに寄り添ってきた【猿捕茨(サルトリイバラ)】。猿まわし同様、日本各地で古くから、人々に親しまれていた植物なのですね。
次回のコラムもお楽しみに。
二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。
猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。
ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう!
主な参考文献・サイト(順不同)
・尼崎市都市緑化植物園「緑の相談所だより」No.359>猿の名がつく植物>2015年12月1日発行
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.amaryoku.or.jp/files/file/fl00000109.pdf?1606790811
・森と水の郷あきた あきた森づくり活動サポートセンター総合情報サイト>樹木シリーズ145 サルトリイバラ
http://www.forest-akita.jp/data/2017-jumoku/145-sarutori/sarutori.html
・語源辞典 植物編/吉田金彦 東京堂出版
・ヘンな名前の植物-ヘクソカズラは本当にくさいのか-/藤井義晴 化学同人
・図説 花と樹の大辞典/木村陽二郎 柏書房
・和漢古典 植物名精解/木下武司 和泉書院
他
・かしわもちとちまきを包む植物に関する植生学的研究/服部保・南山典子・澤田佳宏・黒田有寿茂 人と自然 Humans and Nature, No. 17, 1-11, J a nuary 2007
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.hitohaku.jp/publication/HN17_p1-11-1.pdf