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おサルに願いを①ドゴン族の仮面・猿田彦神社の猿面

民俗学

こんにちは。二助企画です。

 

「猿まわしのはじまりは、暮らしの幸せを願う気持ちでした」

 

これは、私たち二助企画のホームページに記載している言葉です。

 

そう、猿まわしの歴史を紐解くと、その始まりは「人々の平穏な暮らしへの願い」なのです。

 

人は古来より、人間にとても近いと感じられる不思議な動物、おサルさんに様々な願いを託してきました。その知性を崇めることもあれば、時にその存在を、邪悪で危険なものとして捉えることも。そして、このような現象は、日本に限らず世界各地で見られた光景だったのです。

 

今回のブログからは、日本に限らず世界にも目を向けて、人々がおサルさん達に対して、どんな想いや願いを託していたのかを、動物寓話、神話、祭や民俗学の領域からアプローチして、皆様にご紹介していきます。

 

まずは、アフリカ!

 

諸説ありますが、アフリカには25003000もの部族があると言われています。その多くの部族が、サルの仮面や像を作り、集いや踊り、儀式の場で利用されているそう。中には、彫像の代わりに、本物のサルの頭蓋骨を魔術に使う部族もいるとか。

 

今回は、ドゴン族について触れていきます。

 

 

マリ共和国の東部、バンディアガラの断崖近くに住むドゴン族。

 

バンディアガラの断崖は、その壮観な自然環境と、ドゴン族の文化が保持されている地域ということで、1989年にユネスコの世界遺産に登録されています。

 

ドゴン族にとって、儀式などで、仮面をつけて踊ることはとても重要な意味を持ち、仮面には、生命力が宿っていると信じられています。

 

その仮面の中に、サルの仮面があります。サルの仮面は全部で3種類。

 

・ゲテと呼ばれる黒いサル

・オノモと呼ばれる白いサル

・コーと呼ばれる赤いサル

 

といったように、仮面は形ではなく色で使い分けられているそう。

 

中でも、ゲテは、奥地に住むいたずら好きのオスで、農作物を荒し、大食漢。予測不能の行動をとり、とにかく悪いおサルさんのようです。一方、オノモもコーも、決して良いサルというわけではなく、盗みや怠惰といった不適切な振る舞いをします。

 

つまりドゴン族にとって儀式で踊るサルというのは、危険で未開で、反社会的行為の象徴だということ。また、部族が恐れている「魔術」の闇の力を表すという側面もあるようです。

 

ところで、ドゴン族が住むマリの首都バマコは、近代的な高層ビルも見られる都会ですが、なかなか興味深いマーケットが開かれています。

 

「オガンガ」あるいは「マラボー」と呼ばれる呪術祈祷師たちが、たくさんの露店を開き、サル,ハイエナ、ジャッカルの頭部、干したヘビなどを販売しているとのこと!!

 

これらは、神秘的な効力を持ち、その効果を示す聖なる存在として、魔除けのために家や倉庫の外壁に掛けられたり置かれたりしているそう。

 

ちなみに、日本にも似たようなカルチャーがあるのをご存じでしょうか?

 

福岡県の博多では、早良区にある猿田彦(さるたひこ)神社で売られるサルのお面を、玄関に掛けてお守りにするという風習があります。「サルが、外から入って来ようとする魔に睨みを利かせているため、1年間を安寧に過ごすことができる」と信じられているのです。

 

 

※お写真は、猿田彦神舎様のサイトよりお借りしました

 

また、「猿は木から落ちない」ということで、この猿面は、受験生の合格祈願としても人気があるそう。

 

また、サルの仮面ではなく頭骨などを飾る習慣としては、東北地方に厩猿(まやざる)信仰というものがあります。馬の無病息災や厩の火災防止を祈願して、猿の頭骨や手骨を厩に祀るものです。元々は、生きた猿を祀る習慣から始まりましたが、後に猿の骨を祀る形に変遷しました。

 

厩猿(まやざる)信仰については、また改めて別のコラムで詳細をご紹介していきますね。

長くなりましたので、今回はここまで。

 

二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。

猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。

ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

また次回のブログでお会いしましょう!

 

 

参考文献

・サル その歴史・文化・生態/デズモンド・モリス 伊達淳訳 白水社

・早稲田大学大学院教育学研究科紀要 第23号 20133月>フェティッシュと仮面1─視覚の文化─>北澤 裕

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://core.ac.uk/download/pdf/144440454.pdf

・福岡市>の中の観光・魅力・イベント > の中の魅力紹介 > の中の福岡・博多の豆知識 > から博多の豆知識vol.48 「猿のお面を玄関に飾るのが博多の習わし」

https://www.city.fukuoka.lg.jp/promotion/mamechishiki/chishiki48.html

・災い“サル”「猿面」目当てに猿田彦神社にぎわう

https://youtu.be/YaGk5-TOdIQ?si=m_OUu2olXLkeHFrN

・猿田彦神社>神社の歴史

http://sarutahiko-fukuoka.jp/history.html

・牛の博物館>平成16年度牛の博物館友の会シンポジウム>牛馬の守護神「厩猿信仰」

https://www.city.oshu.iwate.jp/section/ushi/07_tomo/mayazaru/main.html

・京都先端科学技術大学>厩猿信仰の歴史的変遷と祭祀形態の転換期における頭骨の意味

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://lab.kuas.ac.jp/~jinbungakkai/pdf/2012/h2012_02.pdf

 

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