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おサルに願いを③エジプトのマントヒヒ

地理その他

こんにちは。二助企画です。

 

「おサルに願いを」シリーズ第3弾。今回はエジプトのサルたちについてのお話です。

 

おサルさんといっても、ニホンザルではないのですが、、、

 

エジプトと言えばミイラが思い浮かぶ方も多いと思います。そのミイラ、実は人間だけでなく動物のミイラもあるのを、ご存じですか?

 

動物のミイラは、ペットとして可愛がられていたものや、死後の食糧としての位置づけのもの、また、神の化身として崇められたものがあったようです。

 

ネコ、イヌ、ヒツジ、ウマ、ネズミなど、多種多様な動物ミイラがありましたが、もちろんその中には、おサルさんのミイラも。

 

おサルさんのミイラには、具体的には、マントヒヒ、アヌビスヒヒ、バーバリーマカク、ミドリザル、パタスモンキーの5種類のサルがいたようです。

 

ただ、この5種類のおサルさん達、マントヒヒとそれ以外のおサルさんで、その扱いに明確な線引きができるのです。

 

実は、古代エジプトにおいて、マントヒヒは「聖なる役割」を持つものとされていました。従って、マントヒヒのミイラは、神の化身という位置づけ、その他のおサルさん達は、ペットとして可愛がられていた為、ミイラとされたと考えられます。

 

古代エジプトで、マントヒヒがどれだけ人々に大切にされていたかは、とても容易に想像できます。例えば、アシュムネイン遺跡。エジプトの中部にある、この遺跡には、高さ6メートル、重さはなんと35トンと推定される巨大なヒヒの像が残されています。

 

※アシュムネイン遺跡に残る巨大なヒヒの像(画像提供:Canva Pro)

 

このヒヒの像は、動物の彫刻としては、スフィンクスについで、恐らく世界第2位の大きさ。古代エジプト人が、ヒヒをどれだけ重要視していたかを証明するものとされています。この他にも、古代エジプトの色鮮やかな壁画、優美に彫られたレリーフなど、あらゆる形式の芸術に、ヒヒは登場しています。

 

では、なぜヒヒがそれだけ大切にされていたのか。

 

それは、ヒヒを当時彼らが崇拝していたトート(書記と学問と月の神)の象徴とみなしていたからです。多くのヒヒが、寺院において神官による選抜試験を課せられ、それに合格したものは、なんと参拝者から上等の炙り肉とワインが与えられていたとのこと!なんて贅沢!

 

面白いのは、その試験内容。神官は、ヒヒの目の前に薄板と葦の筆記用具とインクをヒヒの前において、ヒヒがそれらに興味を示すか否か様子をチェック。興味を示したヒヒは、つまり読み書きができると判断され、すなわち書記と学問(と月)の神トートの象徴に相応しいと判断されたようです。

 

それから、ヒヒが注目された理由はもうひとつ。当時は生殖能力の強さは高貴な美徳とされていました。マントヒヒの繁殖は季節性がなく安定していたため、マントヒヒは、種の繁殖を願う当時の人々にとって、畏敬の念を抱く対象となっていたのです。

 

ただ、とても不思議なことが。エジプトで神格化されたマントヒヒですが、当時のエジプトには、野生のマントヒヒは存在していなかったのです。かれらはすべて、異国からはるばると運ばれて、エジプトで活躍していたのですね。

 

長くなりましたので、今回はここまで。

 

次回も引き続き、「おサルに願いを」シリーズを続ける予定です!

 

二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。

猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。

ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

また次回のブログでお会いしましょう!

 

 

参考文献

・サル その歴史・文化・生態/デズモンド・モリス 伊達淳訳 白水社

・日経サイエンス>20225月号>ヒヒは太陽神ラーの使い 霊長類学で古代エジプト世界の謎を解く

https://www.nikkei-science.com/202205_068.html

・世界のいきもの大図鑑 いきものcom>マントヒヒ

https://ikimonopedia.com/hamadryas-baboon/

 

 

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