おサルに願いを④ヒンドゥー教の猿の神様ハヌマーン
こんにちは。二助企画です。
「おサルに願いを」シリーズ第4弾、今回取り上げるのはインドです!
インドで広く信仰されている宗教のヒンドゥー教では、牛、象、蛇、虎など多くの動物が信仰の対象となっていますが、動物たちの中でもひときわ強く信仰されているのが、猿です。
猿の姿をした神・ハヌマーンは、インドの叙事詩『ラーマーヤナ』に登場するバナラ(インド神話に登場する人間の姿をしたサル族)の王。
勇気、希望、知識、知性をもたらす存在であり、身体的な強さの象徴ともみられ、更には謙虚さ、聖なるものへの献身、清廉さ、正義にも繋がる神であり、あらゆるカーストや宗派から信仰されています。
インド国内を歩いていると、ヒンドゥー教の寺院のみでなく、町や村の道端などあらゆる場所で、ハヌマーン像を見ることができます。それだけインド人にとっては、身近で大切なものであるということですね。
これだけ能力が際立った存在の神は、他の神話でもなかなか見られないようです。
ハヌマーンの父は、インド神話で崇められている風の神ヴァーユ。そして母は天女アンジャナー。その影響か、猿は空を飛ぶことができませんが、ハヌマーンは自由に空を飛ぶことができます。更には体の大きさや、見た目を変幻自在に変えられるという特性を持ちます。
そして印象的なのは、能力だけでなく、その姿。
(画像提供:Canva Pro)
頭部と尾は、オナガザル科の「ハヌマンラングール」のもので、身体は人間のよう。彼の勇敢な精神を象徴するものとして、大きな職杖(しょくじょう:儀式で使用される杖)を持っている姿を描かれることが多いようです。
ということで。
インドではハヌマーンを信仰するゆえに、「ハヌマンラングール」も非常に手厚い扱いを受けています。
インドの人々は、神への貢物として、「ハヌマンラングール」に食事を与えます。聖なるサルのため、果樹園を荒らしたりしても、彼らが追われることはありません。
面白いのは、「ハヌマンラングール」と共に「アカゲザル」も、人々の保護の対象であること。「アカゲザル」は、直接的に聖なる存在ではないけれど、「ハヌマンラングール」の近縁種であることが明らかであるため、自由な行動を許されているようです。ラッキーなおサルさんですね。
ところで、「ハヌマンラングール」と言えば、猿の英雄としての顔のほか、世界中の動物学者に衝撃を与えた習性をもつ動物として有名です。
その習性とは、、、
なんと「子殺し」
現在では、猿以外の動物でも、観察される野生動物の「子殺し」ですが、1964年、京都大学の杉山幸丸氏によってはじめて観察されたのがハヌマンラングールの子殺しでした。
英雄と崇められているハヌマーンの姿とされるハヌマンラングールが、よりによって子殺しでも有名であるとは、なんだか皮肉のような感じもしますが、その習性に関する研究が進むことで、新たな発見に繋がることもあるので、やはりハヌマンラングールは、神の名を持つサルとして注目に値する存在なのかもしれませんね。
次回も、ハヌマーンやハヌマンラングールに関するお話をご紹介していきます。お楽しみに!
二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。
猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。
ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう!
参考文献
・サル その歴史・文化・生態/デズモンド・モリス 伊達淳訳 白水社
・世界のいきもの大図鑑 いきものcom>ハヌマンラングール
https://ikimonopedia.com/northern-plains-gray-langur/
・ときわ動物園>動物たち>ハヌマンラングール
https://www.tokiwapark.jp/zoo/animal/asia/hanumanranguru.html
・世界動物神話/篠田知和基 八坂書房
他