おサルに願いを⑧中国の白猿と日本の白いおサルさん

民俗学その他

こんにちは。二助企画です。

「おサルに願いを」シリーズ第8弾です。引き続き、中国におけるおサルさん信仰・神話のお話をご紹介します。

中国においては、おサルさんが人々の信仰と深く関わっていることは、十二支におサルさんが採用されていることからも、安易に想像がつきますね。

中国で古くから、親しまれてきたおサルさん。前回は、日本でも人気の孫悟空について触れていきました。今回は、「白猿」についてご紹介します。

「白猿」とは、何百年も生き、仙人同様の霊力を持った全身白毛におおわれた猿のこと。中国においては、古代から多くの物語や伝承に登場してきました。

その言い伝えの始まりは、後漢時代だと推定されています。伝承の内容としては、猿が女性をさらうというもの。唐代には『補江総白猿伝』として文学作品化され、白猿は民間伝承と文学の両面において重要な存在となりました。

面白いのは、白猿にまつわるお話には、二面性があること。

女性をさらって、その女性と子どもを成すという筋書きが一般的なのですが、白猿は言い伝えの中で、必ずしも女性を襲う恐ろしい怪物として描かれていません。

ある文学の中では、最終的に退治される人にとって敵対すべき存在。ある話では、人間の女性と深い関係を結び、子孫を繁栄させる象徴的存在として描かれています。先の『補江総白猿伝』の中では、「知的で文化的な側面と、野性的で怪物じみた側面とを兼ね備えた存在」として描かれています（参考：漢字文化資料館　連載記事「両岸の猿声啼きて住まざるに」）

中国の白猿の存在は、世界的に分布する異類婚姻譚（いるいこんいんたん：違った種類の存在と人間とが結婚する説話）のひとつと言えますが、実は日本にも同じような伝承があります。

それは、「猿婿」あるいは「さるの婿入り」と呼ばれる昔ばなし。

爺(じじ)が、田に水を引いてくれた者に娘を嫁にやるという。猿がそれを聞き、田に水を引き、娘をもらいにくる。上の2人は断り、末娘が承知する。里帰りのとき、川の上に見える花を取ってくれと娘が頼む。猿は、花を取ろうとして川に落ち、おぼれて死に、娘は無事に帰る（出典：小学館　日本大百科全書)というお話です。

この昔話は、地域を問わず日本各地に分布しているようです。

ところで

せっかくなので、中国ではなく日本の白猿についてもご紹介しておきます。

「吾妻の白猿」について、お聞きになったことはあるでしょうか？

（画像は、置賜文化フォーラム　吾妻の白猿よりお借りしました）

吾妻の白猿とは、山形県と福島県にまたがる吾妻連峰に生息する体色が白いニホンザルです。野生サルの1%もいないという超貴重なおサルさんで、昭和58年には、米沢市の天然記念物に指定されています。

2023年12月の山形放送局のネット記事によると、現在生息しているのはわずか3匹だとか！美しい白い毛は、アルビノではなく定期的に生まれる自然の変種のようです。そのあまりの希少性から、「山の神の使い」「会えると幸運が訪れる」など言われているよう。ご興味のある方は、YouTubeなどで検索されてみてくださいね。

中国には、白猿伝のように猿が登場する民話や、猿の文字が入った慣用句などがとてもたくさんあります。あまりにもたくさんあるので、いつかまとめてご紹介しますね。

さて、次は舞台を変えてチベットのお話について触れていきます。チベットでもおサルさんは、とても興味深い伝承神話に登場しますよ。どうぞ、お楽しみに！

二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。

猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。

ブログは毎月2回、第１・３金曜日に公開予定。

最後までお読みいただきありがとうございました。

また次回のブログでお会いしましょう！

参考文献

・世界動物神話／篠田知和基　八坂書房

・サル　その歴史・文化・生態／デズモンド・モリス　伊達淳訳　白水社

・漢字文化資料館＜読みもの＜漢文世界のいきものたち＜両岸の猿声啼きて住まざるに

https://kanjibunka.com/yomimono/kambun_animal/yomimono-10937/