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おサルに願いを⑨最初のチベット人

民俗学その他

こんにちは。二助企画です。

 

「おサルに願いを」シリーズ第9弾です。今回は、チベットのおサルさんにまつわる伝承についてご紹介します!

 

まずは、チベットの基礎知識から。

 

チベットは、中国の西南国境地帯に位置する自治区です。ヒマラヤ山脈の北側にあるチベット高原をメインに120万平方㎞の面積を持ち、中国陸地国土の約8分の1を占める地域です。

 

世界最高峰の山として知られるエベレスト山は、チベットとネパールにまたがっていますね。チベットは、ヒマラヤ山脈が連なる地として「世界の屋根」、氷河ある地として「雪の国」とも呼ばれることがあります。

 

さて本題に。

チベット族文化の発祥の地として知られる山南地区の首府は「沢当(ツェダン)」という場所。実は、チベット語で「猿が戯れる場所」という意味なんです。

 

チベット族の起源については諸説あるのですが、始祖は修行中の神猿であり、山南地区に暮らしていたという伝承があります。その詳細は以下の通り。

 

「菩薩の猿」と呼ばれるチベットの猿が不死を求めて洞穴の中で瞑想をしていると、羅刹女(らせつにょ:仏語で、人を食う鬼女のこと。非常に美しい容貌をもつとされている)に、夫婦になろうと言い寄られた。猿は一旦、羅刹女の誘いを断るが、観音様の導きで羅刹女と結婚。その後2人は6頭の子ザルをもうけた。

 

子ザルたちは大きくなると食料を求めて山の中に入っていくが、3年経っても戻ってこない。心配した父ザルが子ども達を探しに行くと6頭だった子ザルがなんと500頭に増えていたとか!

 

パターンA:これだけ多くのサルに行きわたる食料はなかったが、観音菩薩が救いの手を差し伸べるべく、5粒の穀物を与えてくれた。父ザルはこの5粒から子孫を養えるだけの農作物を育て、月日は流れやがて彼らの身体から尻尾がなくなり、体毛も抜け、言葉を操るようになり最初のチベット人となった。

 

パターンB:観音菩薩が自らの身体から5つの穀物を取り出して、彼らに与えたところ、それを食べた猿の毛が落ちて人間となり、最初のチベット人になった(ABの他にも、いくつかのパターンがあるようです)

 

なかなか興味深いお話ですね。

 

ちなみに、チベット国旗の6つの赤い光線は、チベット民族の起源となった、6つの氏族(ミュドゥンテゥク)を象徴しています。

 

 

(画像:ダライ・ラマ法王日本代表部事務所ウェブサイトよりお借りしました)

 

皆さん、想像がついたでしょうか?

 

6つの氏族とは、すなわち上記の伝説の中の6頭の子ザルの直系のことなのです!

 

まさか、国旗のデザインの背景に、おサルさんにまつわる言い伝えが関わっていたなんて!おサルを愛する二助企画としては、なんだか勝手にチベットに親近感を覚えてしまいます。

 

 

二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。

猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。

ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

また次回のブログでお会いしましょう!

 

 

参考文献

・世界動物神話/篠田知和基 八坂書房

・サル その歴史・文化・生態/デズモンド・モリス 伊達淳訳 白水社

・ダライ・ラマ法王日本代表部事務所>ニュース>チベット文明の誕生

https://www.tibethouse.jp/%E3%83%81%E3%83%99%E3%83%83%E3%83%88%E6%96%87%E6%98%8E%E3%81%AE%E8%AA%95%E7%94%9F/

・中国国際放送局>チベット族の発祥地・山南

https://japanese.cri.cn/941/2010/07/16/147s161194.htm

・一般社団法人ツェチェン・テンペル・リン>チベットとチベットの宗教について

https://tsechentenphelling.jp/introduction/tibetanbuddhism/

 

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