おサルさんと烏帽子
こんにちは。二助企画です。
桜の季節はあっという間に過ぎ去り、日差しの強さが気になり始める頃合いとなりました。日焼け対策には帽子!ということで、おサルさんと帽子にまつわるお話を、と考えていて頭に浮かんだのが「猿に烏帽子」ということわざ。
今回のコラムではおサルさんと烏帽子の話です。
猿に烏帽子と言えば、
人柄にふさわしくないことのたとえ。内容と外観とが一致していないこと。外見だけ取り繕って、中身が伴っていないこと(精選版 日本国語大辞典・故事ことわざ辞典より)
という意味。
ことわざでは、おサルさんには烏帽子が「相応しくない」という扱いではありますが、実際には、烏帽子をかぶったおサルさんのイメージって、イラストなどでは一般的です。
伝統芸能の分野では、沖縄に伝わる宮廷芸能「組踊」の演目『花売の縁(はなうりのえん)』に登場するおサルさんも、烏帽子を着用していますし、狂言の演目『靭猿』のおサルさんも、烏帽子をかぶっていることがあります。
街中でも烏帽子をかぶったおサルさん(猿像)に会えます。ざっと調べただけで、
・千葉県東金市にある東金日吉神社
・愛知県清須市にある清洲山王宮 日吉神社
・京都府宇治田原町にある猿丸神社
・京都市東山区にある新日吉神宮
・京都御所の鬼門、北東角を守る築地塀にいる、日吉山王神社の使者である木彫りの猿
・東京都千代田区にある山王日枝神社
などなど。たくさんありました。
※新日吉神宮の狛猿(画像は新日吉神宮からお借りしています)
上記は「烏帽子をかぶったお猿の像」。烏帽子をかぶっていない猿像がある神社は、もっとたくさんあります。
では、おサルさんに烏帽子のイメージは、いつからあったのでしょうか?
13世紀半ばに編纂された「古今著聞集」には、「烏帽子をかぶった猿が将軍の前で上手に舞を舞って、みんなを驚かせた」との記述があり、そのころには既におサルさんと烏帽子はセットだったようです。
岡山県の鹿田遺跡から発掘された、14世紀のものとみられるサルの人形も、烏帽子をかぶっています。江戸時代の絵師、円山応挙が描いた「猿曳図」のおサルさんも、烏帽子をかぶっているように見えます。
最後にもう一つ。
国際日本文化センターのサイトで見つけた、1914年のポルトガル語で書かれた桃太郎の本。
鬼退治を終えて、もてなしを受けている挿絵のおサルさんは、烏帽子をかぶっています!他のページの挿絵では、烏帽子はかぶっていないのに。
※ちりめん本データベースよりお借りしています
烏帽子とは、立派な大人として認められたという証でかぶる物。桃太郎と共に、勇敢に鬼退治を成し遂げた称賛として、おサルさんは烏帽子をかぶっているのだと推測できます。
こうしてみると、随分と昔から烏帽子をかぶったおサルさんはいました。さらに、おサルさん達は、とっても賢く振舞っています。それなのに「猿に烏帽子」ということわざが、「外見だけ取り繕って、中身が伴っていないこと」の例えで使われるのは、なんだか興味深いですね。
二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。
猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。
ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう!
主な参考文献・サイト(順不同)
・猿まわしの系図/飯田道夫 樹林舎
・十二支になった動物たちの考古学/設楽博己 神泉社
文化デジタルライブラリー
https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/contents/learn/edc19/sakuhin/hanauri/
神使像めぐり*余話
新日吉神宮
http://imahie.sakuraweb.com/komazaru.html
猿丸神社
東金日吉神社
https://www.touganehiyoshi.org/
清洲山王宮 日吉神社
http://www.hiyoshikami.jp/jinjasyokai/gosaisin.html
山王祭とは > お猿の紹介
https://www.tenkamatsuri.jp/about/monkey/index.html
国際日本文化センター
https://www.nichibun.ac.jp/cgi-bin/YoukaiGazou/card.cgi?identifier=U426_nichibunken_0115
ほか