おサルさんの足と歩行
こんにちは。二助企画です。
外で過ごすのが気持ちの良い季節ですね。暑すぎず、寒すぎないこの時期は、登山やピクニックなどに出掛ける方も多いのではないでしょうか?お出かけ時には、楽しい気持ちで長時間歩行を難なくこなす私たち人間ですが、二助企画のおサルさん達も、とっても上手に歩行できるんです。
今回のコラムでは、「おサルさん(ニホンザル)の足と歩行」についてのお話です。
まずは、おサルさんの足についてのご紹介。
おサルさんの足の特徴に挙げられるのは、母指(いわゆる親指のことです)。私たち人間とは違い、おサルさんの足の母指の主軸は足の内側に向かっており、他の指との間でモノを握りしめることができます。だから、木の枝や物をしっかりと掴むことができるんですね。
また、おサルさんの足には土踏まずがありません。土踏まずは、私たち人間の足にあるアーチ状の部分で、体重を分散し、歩行時の衝撃を吸収する役割を果たしています。地球上には、4500種類を超える哺乳類がいますが、土踏まずを持つのは、私たちヒトだけ。つまり、土踏まずの有無が、ヒトとその他の動物を分けるポイントの1つであるとも言えます。
ところで、おサルさんの走る足の速さはなんと、約時速30キロ!野生のおサルさんの移動距離は、おおよそ1〜2時間で約1キロメートル程度と言われています。広い範囲を移動して餌を探し、新しい環境を探索するため、移動は重要な活動なんですね。
そして、本コラムの主題である「歩行」について。
多くの霊長類は二足歩行ができますが、直立二足歩行は人間にしかできないのです。なぜなら、直立二足歩行には股関節の過伸展が必要で、人間の股関節の過伸展は約180度ですが、霊長類では約160度程度に制限されているから。
言葉では、わかりにくいと思いますので、参考文献から図をお借りしました。
画像出典)高井正成・中務真人『化石が語るサルの進化・ヒトの進化』P115(令和4年) 丸善出版
二助企画のおサルさん達が、長時間上手に二足歩行ができる秘密も、上記の図の中に。
実は猿まわしのおサルさん達は、訓練によって、腰椎前弯(ようついぜんわん)という特徴を得ているのです。体重の中心を股関節近くに移動させ、体を直立に近づけるための適応です。このような姿勢を取ることで、長時間の二足歩行を叶えているのですね!
上記の秘密は、葉山杉夫氏(元関西医科大学)と「周防猿まわしの会」との共同研究によって明かされたものです。同研究によると、猿まわしのおサルさんが二足歩行をする際には、四足歩行に比べて2〜3割増しのエネルギーを消費することが判明しています。しかし、心配しないでくださいね。訓練されたおサルさんたちの下肢の動きなどは、ヒトに似た特徴があり、負担が非常に大きいとは言い切れません。
ちなみに、「イモ洗い行動」という文化を持つことで、世界から注目を浴びている宮崎県串間市の幸島の野生猿は、他の猿に比べてより多くの時間を二足歩行で過ごすことが観察されています。イモを「持って歩く」からですね。
この「食べ物を持って歩く」という行為は、人類が直立二足歩行をするようになったきっかけとも言われています。つまり、こうしたおサルさんたちを対象にした研究は、人類の進化の秘密を探るのに、大きな貢献をしているということ。改めて、おサルさん達に、感謝の気持ちを感じます。
二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。
猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。
ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう!
主な参考文献・サイト(順不同)
・ニホンザルの生態/河合雅雄 講談社学術文庫
・新しい霊長類学/京都大学霊長類研究所 講談社
・化石が語るサルの進化・ヒトの進化/高井正成 中務真人 丸善出版
・ニホンザルの二足歩行と四足歩行における動的足底圧分布
https://www.jstage.jst.go.jp/article/primate/21/0/21_0_53/_article/-char/ja/
・生き物NAVI>猿が走る足の速さはどれくらい?
https://livingthing.biz/archives/2376
ほか