「猿」がつく地名のおはなし①(防災の日にちなんで)
こんにちは。二助企画です。現在、二助企画では、25周年記念として、「走れ!ウキウキお猿の宅配便」という手話を取り入れた猿まわしの全国公演を行っています。岐阜、秋田、山梨など、全国各地を訪れているので、今回のコラムでは「猿」という言葉が入った地名についてご紹介していきます!
「さる」という音が入った地名は、全国に多く見られます。角川日本地名大辞典によると、ざっと300近くの地名が!!漢字としては「猿」が圧倒的に多いのですが、他にも「沙流」「佐留」といったものもあります。
二助企画が調べた限りでは、その地名の由来は、古語のザルの転訛、アイヌ語の「サル」由来、その地域に伝わる民話からなど複数のパターンに分かれるようです。
今日は9月1日「防災の日」ということで、災害地名に関連するお話からスタート。
サルは、古語のザレの転訛(てんか)で、山が崩れて欠け落ちたところ、谷の崩れることという意味があるそうです。また、ズレルの転訛とも言われており、地崩れ地、崖などの意味があります。香川県では、ザルは崩れるという意味で使われるとか。
地名の例としては
・宮城県石巻市北村の猿田入(さるたいり)
・宮城県角田市の平貫猿田(ひらぬきさるた)
・石川県輪島市門前町猿橋(もんぜんまちさるはし)
・愛知県常滑市大谷字猿喰(おおたにさるまめ)
・徳島県美馬郡つるぎ町貞光猿飼(さだみつさるかい)
・奈良県吉野郡戸津川村猿飼(さるかい)
・新潟県上越市板倉町大字猿供養寺(さるくようじ)
など。(他にも全国たくさんあります!)
こうしてみると、二助企画として気になるのは「猿飼」という地名です。その文字から、お猿さんを飼っている人が多かったのかな!?と勝手に親近感を持ってしまいますが、こちらはどうやら期待どおりではなく、「飼」は「峡」や「谷」という文字がその由来。つまり、地が滑って谷や崖となった場所のようですね。
他にも、サルは「去る」の意味での解釈もあります。水が①砂を流出する「去る」②さらす(曝す)という意味でしょうか、猿川という地名・川もいくつか見られます。具体的には
・群馬県桐生市黒保根町 猿川温泉(さるかわおんせん)
・愛媛県北条市 猿川(さるかわ)
・和歌山県広川町 猿川(さるかわ)
など。
ところで「猿」を使った言葉で、川の治水に関するものと言えば「猿尾」(さるお)という言葉があります。
猿尾とは、石積みの水制。堤から猿の尾のように斜めに築堤した小高い堤防を指します。江戸時代から明治時代にかけて多く築かれました。かつては、将藍猿尾、石田猿尾など沿川に固有名詞が付けられた猿尾が多々ありました。現在はほとんど残っていませんが木曽川沿いにはその痕跡を残す箇所が点在しているようです。
ちなみに、青森県三戸郡には猿辺川(さるべかわ)、岩手県遠野市には猿ヶ石川(さるがいしがわ)という川がありますが、こちらは、アイヌ語由来のようです。
ということで、次回のブログでは、アイヌ語由来の「猿」の地名についてご紹介していきます!
二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。
猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。
ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう!
主な参考文献・サイト(順不同)
・あぶない地名-災害地名ハンドブック-/小川豊 三一書房
・続日本の地名-動物地名をたずねて‐/谷川健一 岩波新書
・地名苗字読み解き事典/丹羽基二 柏書房
・災害・崩壊・津波地名解-地名に込められた伝言/太宰幸子 彩流社
・島の名前 日本編/中村庸夫 東京書籍
・日本の地名-60の謎の地名を追って-/筒井功 河出書房新社
・川の百科事典/編集委員長 高橋裕 丸善株式会社
・日本地名大辞典(上) 新人物往来社
ほか