ニホンザルの出産について
こんにちは。二助企画です。
新年あけましておめでとうございます!
23年末は、ニホンザルの寿命や1年についてお話いたしました。その際に、人間とニホンザルでは成長曲線が異なるため、単純な比較は難しいということに触れました。
ニホンザルの場合、アカンボウ期(0歳から1歳まで)、コドモ期(1歳から4歳まで)、ワカモノ期(オスでは5歳から9歳ごろまで/メスでは5歳から6歳ごろまで)、オトナ期(それ以降)の4期に分かれて、変化を見ていくことができます。
ここからは、ニホンザルの一生について、その詳細をみていきたいと思います。今回はアカンボウ期の前!ニホンザルの出産についてご紹介いたします。
まずは、出産するための準備、月経と妊娠について。
ニホンザルの月経周期は、人間と同様に約30日。しかし排卵を伴った正常月経周期は、繁殖期にあたる秋から冬にかけての数ケ月間のみ出現するようです。妊娠期間は約180日前後。1年から3年おきに1頭の赤ちゃんを出産します。双子ちゃんが生まれることはほとんどなく、極めて稀。一生涯にだいたい10頭ほどのこどもを生みます。
そして、出産について。
前回お伝えしたようにニホンザルの出産時期は春。人間のように通年いつでも赤ちゃんが生まれるのではありません。具体的には、3月~7月の間に生まれることが多いようです。
そして、生まれる場所は決まっていません。ニホンザルは、巣をもっているわけではないので、どこででも出産します。産まれる時間は、早朝が多いようです。人間と同じように、陣痛も破水もあります。
産まれる時、母親は自分の両手で赤ちゃんを抱いて取り出しますが、後産がおりず、赤ちゃんとへその緒でつながったまま歩き出すこともあり、人間のような大きな苦痛はないと考えられています。
少し話が広がりますが、おサルさんの出産について、考古学の観点からアプローチすると、ニホンザルの出産が、人間と比べて「軽い」つまり安産であると捉え、安産の祈願にサルの土偶が用いられたという解釈があります。
青森県南部町にある下比良遺跡から出土した大きなお腹をした屈折土偶。縄文前期(約2000年紀)のものとみられますが、ひょっとこのような顔でサルを彷彿させる土偶で、ニホンザルと人間の出産がかさねあわせられていた、あるいは、ニホンザルが人間の出産儀礼と密接に関わっていたという可能性を示唆してます。ニホンザルの出産の、安全性・迅速性が土偶に取り込まれた結果だという分析です。
現在においても、各地の山王神社には安産のお守りと猿が関連されています。例えば、東京都千代田区の日枝神社。境内に狛犬ではなく「猿」が置かれている神社ですが、社殿前に安置されている夫婦の神猿像には、安産を願う多くの人が訪れています。
また、岐阜県飛騨高山で有名な「さるぼぼ」。飛騨の方言でおサルの赤ちゃんを意味する「さるぼぼ」の原型は、貴族のお産のお守りだと言われています。
遠い昔から、人間と深く関わってきた日本のおサルさん達。人の安産祈願にも、ひと役買っていたことは、二助企画としては、なんだか嬉しい気持ちになります。次回は、かわいいかわいいおサルさんたちの赤ちゃんについて、ご紹介していきます!
二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。
猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。
ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう!
主な参考文献・サイト(順不同)
・ニホンザルの生態/河合雅夫著 講談社
・新しい霊長類学/京都大学霊長類研究所 出版社:講談社
・十二支になった動物たちの考古学/設楽博己 新泉社
・ニホンザルの季節繁殖リズムの発現機序/霊長類研究 野崎眞澄
・飛騨高山さるぼぼ屋さん
https://www.hidanosarubobo.com/sarubobo.html
・日枝神社>お猿の紹介
https://www.tenkamatsuri.jp/about/monkey/index.html
・京都大学人類進化論研究室>発達
https://jinrui.zool.kyoto-u.ac.jp/FuscataHome/hattatsu.html
・地獄谷野猿公苑>ニホンザルの一生
https://jigokudani-yaenkoen.co.jp/contents/detail?id=125
・地獄谷野猿公苑>ニホンザルの一年
https://jigokudani-yaenkoen.co.jp/contents/detail?id=120
他(順不同)