ニホンザルの反抗期について①
こんにちは。二助企画です。
前回は、ニホンザルの赤ちゃんについてのお話をしました。今回は、ニホンザルの反抗期についてご紹介します。
反抗期と耳にすると、多くの方は、2歳児前後のイヤイヤ期、そして思春期の反抗期が思い浮ぶのではないでしょうか?
一方、おサルさんに関しては、3回の反抗があると捉えてよさそうです。まずは、母への反抗。これは、母子分離とも捉えられますね。そして、ワカモノ期の反抗、最期に集団への反抗。今回は、最初の反抗期、母子分離や離乳時期の反抗についてのお話です。
前回のコラムでは、赤ちゃんザルが母ザルから独立するための第一歩は「離乳」だと触れました。
ちなみに、ヒトの場合は、母乳以外の食べ物を摂取するようになること(=離乳食をはじめること)は、まだまだ自立への第一歩は言えません。なぜならヒトの赤ちゃんは、母乳以外の食物の摂取に、養育者の介助が必要となるからです。
話を戻して、おサルさんの離乳について。
まず、子ザルは固形物の嚥下ができるようになる前、生後20日前後の時期に、なんでも口にいれてしゃぶるようになります。興味深いことに、飼育下のおサルさん達は、この頃に指しゃぶりが始まります。一方、野生のおサルさんは、指しゃぶり行動は、ほとんど見られないそう。
そしてこの時期になると、子ザルは「拗ねる」という行動をとり始めます。その拗ね行動は、まるでヒトの子どものよう。気に入らないことがあると、泣きわめき続けたりするのです。いわゆる自我の芽生えですね。
固形物の嚥下ができるようになると、子ザルにとって大きな試練が訪れます。「母ザルによる子ザルへの攻撃行動」が見られるようになるからです。子ザルがおっぱいを求めてきても、母ザルは寄せ付けず拒否します。子ザルは最初抵抗をしますが、やがて母ザルの拒否を受け入れるようになります。逆に言えば、子ザルは母ザルから拒否をされることで諦めて、固形物を自分で摂取するようになっていきます。
この離乳の時期とほぼ同時期にみられ始めるのが、反抗期。運動機能が発達した子ザルは、母ザルから離れて、子ザルだけで集い遊び始めます。遊びが楽しいのはヒトもおサルさんも同じ。遊ぶ楽しさを知り、好き嫌いを自覚し始めた子ザルは、母ザルが呼んでも返事をしなかったり、逃げたりします。
そんな子ザルに対して、母ザルはどう対応するのか?
子ザルをほおっておくのです!そうすると、子ザルはすねて泣くのですが、それでも母ザルが歩み寄ることはありません。それに対して子ザルは、耐えきれずに弾丸のように母ザルの胸に飛びこんだり、更に注意を喚起するように、遠くに離れて泣いたり。親の保護を求めつつ、離れるといった行動を繰り返しながら、少しずつ母と子の距離が離れていきます。
余談になりますが、おサルさんの母子関係の研究では、「母ザルの個性によって、子ザルの社会化の過程は異なる」という実験結果があります。具体的に言うと、母ザルの養育態度は、子ザルにも引き継がれるのです。つまり、おサルさんの個性は、遺伝的要因ではなく、環境要因に起因するということ。
従って、もしかしたら子ザルの反抗行動も、母ザルの攻撃行動も、飼育下のおサルさんと野生のおサルさんでは、傾向に違いがみられるかもしれません。おサルさんのことを深く知ることは、人について知ることと、強く繋がりますね。
二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。
猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。
ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう!
主な参考文献・サイト(順不同)
・ニホンザルの生態/河合雅夫著 講談社
・新しい霊長類学/京都大学霊長類研究所 出版社:講談社
・猿とヒトのエソロジー/糸魚川直祐・南徹弘共著:培風館
・児童心理67(11)P42-47/サルの子は親からどう自立するか 根ケ山光一
・教育と医学33(1)P88-94/動物の反抗-ニホンザルについて‐ 糸魚川直祐
・生産と技術66(第4号)/ニホンザルの個性と発達 山田一憲
・サルの赤ちゃん‐ニホンザルの飼育実験/中公新書 川辺寿美子
・家庭保健と小児の成長・発達に関する総合的研究/高崎山日本猿集団における相互作用と行動発達に関する研究/三吉野産治 佐々木清美
他