ニホンザルの反抗期について②
こんにちは。二助企画です。
前回は、ニホンザルの反抗期について、とりわけ「母への反抗」、母子分離の過程についてのお話をさせていただきました。今回はその次の反抗期、ワカモノ期の反抗についてのお話です。
まず、おサルさん達の「ワカモノ期」についてのご説明から。
「ワカモノ期」は、オスの場合3.5-8歳、メスの場合3-7歳あたりの時期と定義されています。何を持って、ワカモノと称するかについては、オスなら生殖器が大きくなる、メスなら乳首が目立つようになるなど、性の発達が関わってきます。
オスもメスも、2歳半くらいまでは、その行動に性差はほとんど見られません。オスメス関係なく混ざり合ってよく遊びます。しかし2歳半以降になると、夜寝る時や寒いときなどに、オスはオス、メスはメスでしっかり抱き合って眠ったり、遊びの内容も変わってきます。
さて、ワカモノ期の具体的な反抗は、攻撃、逃避、逃走などの様々な行動が、複雑な形で現れます。子ザルが母ザルよりも先に餌を摂るなど、母親より優勢にふるまうことも、反抗のひとつと捉えられます。母親との優劣関係の逆転行動に関しては、オスとメスで、その頻度が異なります。オスの方が母ザルに対して優位に振舞う傾向が強い。メスは、反抗期時期であっても、母親との親密関係が維持されます。
ワカモノ期のオスは、生まれた群れを離れて単独で行動したり、群れとは別のオスグループを作ったりします。メスでは、そうした行動で反抗を表すということはありません。メスは3歳前後で月経がはじまり、遊びの中でも子守り行動を見せたりします。つまり、オスは、他人(他サル?)との距離を取る傾向にありますが、一方メスは自分以外のおサルさんとの交流を保つといったイメージでしょうか。
おサルさん達同士の交流・コミュニケーションについて言えば、多くの方がきっと、毛づくろい(グルーミング)を思い出されることかと思います。毛づくろいについても、いつかコラムのテーマで取り上げていきますね!
さて、性差によってワカモノ期の行動・反抗の頻度が異なるのは、おサルさんの群れの構造、群れにおける役割の違いなどが影響していると思われます。
実はニホンザルは、母系社会の中で生きています。メスは、生まれ育った群れの中で一生を過ごしますが、オスは群れを移籍するのです。そしてオスは、基本的には他の群れに入った後に、母親と交流することはありません。
要するに、オトナのおサルさん達は、オスとメスで、集団の中で社会的に担う役割が異なるのです。ワカモノ期は、オトナになる一歩手前の段階なので、性差で行動の違いが現れてくるのですね。
次回は、群れの中での反抗について、触れていきます。
二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。
猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。
ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう!
主な参考文献・サイト(順不同)
・ニホンザルの生態/河合雅夫著 講談社
・新しい霊長類学/京都大学霊長類研究所 出版社:講談社
・猿とヒトのエソロジー/糸魚川直祐・南徹弘共著:培風館
・児童心理67(11)P42-47/サルの子は親からどう自立するか 根ケ山光一
・教育と医学33(1)P88-94/動物の反抗-ニホンザルについて‐ 糸魚川直祐
・生産と技術66(第4号)/ニホンザルの個性と発達 山田一憲
・サルの赤ちゃん‐ニホンザルの飼育実験/中公新書 川辺寿美子
・家庭保健と小児の成長・発達に関する総合的研究/高崎山日本猿集団における相互作用と行動発達に関する研究/三吉野産治 佐々木清美
他