いろんな呼び名がある!
こんにちは。二助企画です。
前回までのお話と一転して今回は、ニホンザルには「サル」以外に、いろんな呼び名があることについてのご紹介です。
まず、ニホンザルが、サルと呼ばれるようになったのはいつから?という素朴な疑問について。
古書を紐解くと、3世紀末の『魏志倭人伝』において、日本に猿がいたことが記されていますが、その時の表記は「び猴(ビコウ:※ビの漢字表記が出せずに申し訳ありません)」でした。
奈良時代の『風土記』では、「び猴」「猿(猨)」「猴」と表記されています。
『古事記』『日本書紀』にでてくるサルタヒコはサルを「サル」と発音していたことがわかる古い例。
ただ、サルタヒコの語源は諸説あります。いくつかの説がある中でも、「尻が赤い」という表記があることから、動物名の「サル」が存在していたと推測されるようです。
『古今和歌集』19巻においては、907年に法皇(宇多上皇)が
法皇にし川におはしましたりける日、さる山のかひにさけぶといふことを題にてうたよませたまうける
と、「サル」の歌を求めたことに対して、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)が、
わびしらに 猿(ましら)な鳴きそ あしひきの 山のかひある けふにやはあらぬ
訳:猿よ、心細げに鳴いてくれるな。山の谷間にいるお前たちにとって、今日は(法皇の御幸(みゆき)で)鳴きがいのある日ではないのか。
と「マシラ」の歌を詠んでいます。「サル」のお題に対して、「マシラ」という言葉で応えていることから、「サル」が「マシラ」とも呼ばれていたことが分かります。
「マシラ」の他にも「サル」を表現する言葉はいくつかあります。
「マシラ」に似ていますが、「マシ」という言葉。「サル」という音の響きを「去る」と捉え、縁起が悪いと考え、めでたいことが増すように、と「マシ」(増し)と呼んでいたようです。
ただ、これらの「マシ」「マシラ」については、どうやら歌語(かご:和歌に用いられることば)だったようです。
今回は深く追求しませんが、ニホンザルは、古から日本人の暮らしに深く関わってきた存在。猿が出てくる和歌もたくさんありますので、いつかコラムで触れていきたいと思います。
さて、「サル」の別の呼び名に話を戻します。
恐らく皆さんがすぐに思いつくのに、「エテ」が挙げられるでしょう。
「エテ」は「得手」から来ているようです。文字通り、何かを手に入れる、という願いが込められており、また「得手」とは、得意という意味もありますね。
得意=優る・勝る(まさる)ということにも通じので、「真猿(まさる)」とかけた洒落であったという説もあるようです。
「まさる」と言えば、日吉大社や日枝神社で神の使いとして大切にされている「神猿(まさる)」もありますね。色々と繋がり、面白い限りです。
二助企画は、日本の伝統芸能猿まわしのプロフェッショナル集団。
猿まわしやニホンザルのことについて、あらゆる領域から情報発信をしてまいります。
ブログは毎月2回、第1・3金曜日に公開予定。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回のブログでお会いしましょう!
主な参考文献・サイト(順不同)
・ニホンザルの生態/河合雅夫著 講談社
・新しい霊長類学/京都大学霊長類研究所 出版社:講談社
・weblio古語辞典「わびしらに・・・」
https://kobun.weblio.jp/content/%E3%82%8F%E3%81%B3%E3%81%97%E3%82%89%E3%81%AB
小倉山荘>読み物>小倉百人一首>呼び捨ての歌人たち(後半)
https://ogurasansou.jp.net/columns/arakaruta/2018/01/20/1733/
語源由来辞典
https://gogen-yurai.jp/etekou/
他